【温泉の歴史と文化】第3回のテーマは「温泉関連の建築について」です。前回の記事では温泉地で生まれた小説ついて解説しました。今回は温泉関連の建築について、実際の重要文化財や有形文化財をいくつかご紹介します!
温泉と重要文化財4選
重要文化財とは
重要文化財とは、日本政府が文化財保護法に基づき指定した、建造物や美術工芸品、考古資料、歴史資料などの有形文化財のうち、歴史上・芸術上・学術的に高い価値を持つものを指します。その中でも世界文化の見地から特に価値が高いものは、国宝として指定され、国民の宝として保護されています。これらは通称「重文」と呼ばれています。
【温泉と重要文化財①】武雄温泉 新館及び楼門
佐賀県武雄市にある武雄温泉 新館及び楼門は、歴史ある温泉町である武雄の拠点として建設されました。辰野・葛西事務所による設計、清水満之助による施工で、新館は大正3年に完成し、楼門は同年に上棟されました。新館は木造二階建てで、正面中央に玄関車寄を備えており、背面には浴室と便所が別棟になっています。一方、楼門は竜宮門形式の木造二重門で、入母屋造本瓦葺きです。和風意匠を基調としつつ、新しい試みが見られる細部意匠や架構等があり、辰野金吾が関与した貴重な和風建築です。全体の配置計画なども特徴的で、日本の近代保養施設の歴史を知る上でも重要です。
【温泉と重要文化財②】上諏訪温泉 片倉館 会館棟、浴場棟、渡廊下
長野県諏訪市にある上諏訪温泉 片倉館は、昭和初期に建設された大衆浴場です。当時代表的な製糸業者であった片倉家が地元の人々の福祉施設として建設したこの温泉浴場は、日本の浴場としては珍しい西洋風の建物で、浴場棟、会館棟及び渡廊下の3棟が重要文化財に指定されています。名物の「千人風呂」は、大理石造りの浴槽で、広さは100人が同時に入浴できるほど大きいです。浴槽の底には玉砂利が敷き詰められ、立っているだけで心地よい刺激が感じられます。上諏訪温泉 片倉館は、歴史的な価値があり、温泉愛好家や文化愛好家にとって、必見のスポットです。
【温泉と重要文化財③】道後温泉 道後温泉本館
愛媛県松山市にある道後温泉は日本最古の温泉であり、道後温泉本館はそのシンボル的存在です。「神の湯」を代表する温泉施設は、現在でも公衆浴場として営業しており、平成6年には重要文化財に指定されました。さらに、平成21年に発行されたミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでは最高位の三つ星を獲得しています。 この建物は道後湯之町初代町長の伊佐庭如矢が100年後の道後の繁栄を見据え、明治27年に改築したもので、坂本又八郎によって設計された壮麗な三層楼となっています。大屋根の中央にギヤマンを使用した塔屋を載せ、その上には道後温泉ゆかりの白鷺が据えられ、西洋の技法を取り入れたトラス構造が用いられています。
【温泉と重要文化財④】箱根湯本温泉 福住旅館 萬翠楼・金泉楼
箱根湯本温泉 福住旅館は神奈川県足柄下郡箱根町に位置し、寛永2年に創業した老舗温泉旅館です。旧館「萬翠樓」と「金泉樓」は、伝統的な数奇屋風の日本建築と西洋の技法や意匠を融合した擬洋風建築で、神奈川の建築100選に選ばれるとともに更、平成14年には現役旅館として初めて国の重要文化財建造物に指定されました。
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温泉と登録有形文化財5選
登録有形文化財とは
登録有形文化財とは、建築後50年以上が経過し、国土の歴史的景観に貢献し、造形の規範となり、再現が困難な建造物のことを指します。この基準に該当する建造物が、国の登録有形文化財として保護されています。
【温泉と登録有形文化財①】東山温泉 向瀧
福島県会津若松市にある東山温泉 向瀧は、明治6年創業の歴史ある温泉旅館です。文化財保護法が施行された平成8年10月01日に、文化庁によって登録有形文化財の第1号物件に指定されました。豊かな自然に囲まれた温泉地にあり、心身ともにリフレッシュできます。
【温泉と登録有形文化財②】青根温泉 不忘閣
宮城県柴田郡川崎町にある青根温泉 不忘閣は、創業約500年の老舗旅館であり、伊達政宗が宿泊した際に「不忘」と命名したと言われている。不忘閣には国の登録有形文化財の建築が7棟あり、伝統的な建築の風情を満喫できます。また、翌朝には女将自身による館内歴史ツアーがあり、伊達藩から伝わる数多くの古文書や調度品など、貴重なお宝を見ることができます。青根温泉 不忘閣は、歴史と伝統に溢れた素晴らしい旅館です。
【温泉と登録有形文化財③】銀山温泉 能登屋旅館
山形県尾花沢市にある銀山温泉 能登屋旅館は銀山川と急傾斜地に挟まれた秘湯の里に位置する老舗温泉旅館です。木造3階建てで、塔屋が特徴的な和風建築で、バルコニー付きの洒落た玄関も魅力的です。周辺の景色も楽しめ、国内外問わず、温泉愛好家や建築愛好家に広く愛されています。
【温泉と登録有形文化財④】四万温泉 積善館山荘
四万温泉 積善館山荘は群馬県吾妻郡中之条町に位置し、昭和11年に建築された老舗温泉旅館です。木造2階建てで、中央部が突出した入母屋の屋根を持つ建物は、地元職人による施工であり、床廻りの意匠が特徴的です。積善館山荘は世界的に有名なアニメ映画のモデルともいわれており、四万温泉を訪れる観光客に人気があり、その美しい建築様式が魅力的な宿泊施設です。
【温泉と登録有形文化財⑤】法師温泉 長寿館
群馬県利根郡みなかみ町にある法師温泉 長寿館は群馬県を代表する足元湧出温泉の秘湯宿であり、平成18年8月24日に「本館」「法師乃湯」「別館」の3棟が登録有形文化財に指定されました。この宿は、法師川東岸に南北棟で建ち、木造2階建て、切妻造、杉皮葺の建物です。1階には玄関や事務室があり、2階には客室があります。玄関上部には切妻造の屋根があり、2階正面には手摺が設置されています。屋根からは煙出しができる構造になっています。法師温泉 長寿館は貴重な歴史建築物であり、自然に囲まれた趣のある宿泊施設です。
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温泉関連の近代建築3選
① 隈研吾デザインの共同浴場|銀山温泉 しろがね湯
山形県尾花沢市に位置する銀山温泉 しろがね湯は建築家 隈研吾氏によって設計されたモダンな建物が特徴的な日帰り入浴施設です。共同浴場とは思えないほど斬新なデザインで、1階と2階に浴室があり、2階の浴室は窓が大きく、周囲の景色を楽しめます。温泉は源泉掛け流しで、ナトリウム、塩化物、硫酸塩が含まれており、硫化水素の香りと塩味を堪能できます。
② 隈研吾デザインの温泉旅館|ふふ 奈良
奈良県奈良市にある「ふふ 奈良」は奈良公園の一角に位置する全室スイートのリゾートホテルです。建築家 隈研吾氏が設計した館内には、奈良の魅力を随所に感じられる空間が広がっています。神聖な空気が漂うこのホテルは奈良を訪れる旅行者にとって、理想的な宿泊先となっています。
③ 安藤忠雄が設計した美術館をリニューアルした温泉ホテル|瀬戸内リトリート 青凪
瀬戸内リトリート青凪は愛媛県松山市に位置するオールスイートのラグジュアリーホテルです。建築家 安藤忠雄氏による建築・設計で知られ、1998年に大王製紙のゲストハウス兼ミュージアムとして設立され、「エリエールスクエア松山」という名前でした。2015年にホテルとしてリニューアルされ、全7室のラグジュアリーホテルに生まれ変わりました。
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【温泉の歴史と文化】温泉文化の象徴は建築にあり! まとめ
温泉地には多くの重要文化財や登録有形文化財が存在します。今回はその中でも特に注目すべき建築物をご紹介しました。歴史的な価値や美しいデザインに加え、温泉地の魅力を象徴する建築物は、観光客にとっても必見です。