温泉ってどうやってできるの?温泉の成因について|温泉の科学

【温泉の科学】第1回のテーマは「温泉の成因について」です。まずは温泉がどのような要素でできているのかを学び、温泉のできかた(成因)に迫りましょう。

温泉の構成要素と多様性

温泉は3つの要素で形成される

温泉は、温度、湧出量、泉質、湧出形態など、非常に多様な要素から成り立っています。したがって全く同じ温泉は存在しないと言えます。温泉の多様性は温泉が形成される3つの要素である『熱』『水』『成分』の起源が、多様な組み合わせをつくるため生まれます。温泉は成因によって多様な個性が形成されます。

【温泉の3要素①】熱源

温泉における熱源には、『マグマ熱源』と『非マグマ熱源』の2つがあります。

  1. マグマ熱源には、現在活発な火山に見られる「マグマ溜まりの熱」や、固結している比較的古い火山のマグマ溜まりから放出される「高温岩体の熱」、そして地下の岩盤に枝状に分岐したマグマが固まった貫入岩体から放出される「貫入岩体の熱」などがあります。
  2. 非マグマ熱源には、殆どの岩石中に含まれる微量な放射性元素の崩壊による「自然地温の熱」や、地殻運動に伴って発生する摩擦や圧縮による「地殻運動の熱」、そして放射性元素を多く含む岩石による「放射性元素の熱」があります。これらは地殻深部で温泉を生み出すほどの熱量を持っています。

放射性元素の熱源で有名な花崗岩は放射性元素を多く含むため、自然地温を上回る熱を発生することがあります。活断層が運動するときの摩擦熱も意外に大きいことがわかっています。

【温泉の3要素②】水源

温泉の水源には、『循環水』『マグマ水』『変成水』の3種類があります。

  1. 循環水は地下の熱源によって温められたふつうの水で、天水と海水があります。
    ※天水:雨や雪などの降水量によって地表に存在する淡水の一種。
    ※海水:現在の海水だけでなく地層に閉じ込められた化石海水も温泉の水源となる海水に含まれる。
  2. マグマ水はマグマが冷えて固結する際に固結岩にとりこまれなかった水分であり、初生水と呼ばれることもあります。
  3. 変成水は地殻の岩石が高温・高圧下で変成する際に絞り出された水分で、一部の温泉の水源になっていると考えられています。

【温泉の3要素③】成分源

温泉の成分源には、主に『マグマ水成分』『岩石溶出成分』『海水成分』そして『有機成分』があります。

  1. マグマ水成分は非常に高い濃度の成分を含んでおり、ガス成分も豊富です。
  2. 岩石溶出成分は岩石中の鉱物に含まれており、水に触れると徐々に溶け出します。
  3. 海水成分にはミネラルをはじめ地球上の様々な種類の成分が豊富に含まれています。
  4. 有機成分は生命活動によって作られたもので、炭化水素などが含まれます。

温泉は、これら多様な成分が組み合わさってできたものであり、それぞれの成分によって様々な効能があるとされています。

確認テスト

Q. 放射性元素の熱を発生させることが知られている岩石の名称は次のうちどれ?

不正解

正解

不正解

不正解

温泉のできかた|成因による分類

【温泉の成因①】火山性温泉

火山性温泉は、主にマグマ熱を源として循環水と岩石溶出成分にマグマ水成分が加わったものです。このタイプの温泉は、高温であり、泉質も多様であるため、酸性泉や硫化水素泉を含め、特徴的な存在となっています。火山周辺に分布するほか、日本全国には古代のマグマ活動の名残が残り、火山性温泉の形で現れています。

【温泉の成因②】非火山性温泉

非火山性温泉には『海岸温泉』『深層地下水型温泉』『化石海水型温泉』『グリーンタフ型温泉』の4種類があります。

  1. 海岸温泉は主に現海水からなる温泉で、泉質は食塩泉(塩化物泉)でイオン成分比は多様です。
  2. 深層地下水型温泉は循環水で温度が上昇したもので、日本では平野部に多く見られます。含有成分量は希薄であり、泉質は地下の地質によって異なります。
  3. 化石海水型温泉は古い海水が地下に溜まり、非マグマ熱源によって温度上昇したもので、太古の海水がもとになっているため、有機成分が豊富であることが特徴です。
  4. グリーンタフ型温泉は大昔の海底火山活動で岩石中に固定された海水成分が、現在の循環水に溶出してきたものであり、硫酸塩泉や食塩泉が多く見られます。日本海側に多く見られ、もともとの熱源は火山に起因するものですが、一般的に非火山性温泉に分類されます。

これらの非火山性温泉は、日本全国に広く分布しています。

【温泉の成因③】特殊な成因の温泉

特殊な成因の温泉には、様々な種類がありますが、ここではとくに有名な3種類『活断層に伴う温泉』『有馬型温泉』『放射能泉』をご紹介します。

  1. 活断層に伴う温泉は地震の影響で温度が上昇した循環水です。
  2. 有馬型温泉は濃い食塩泉であり、重金属が豊富で赤みがかったの湯色が特徴的です。火山帯に位置していないにもかかわらず、高温の温泉が沸いており、非常に特殊な熱源を有している温泉です。
  3. 放射能泉は放射性元素のイオンやガスが豊富に含まれ、単純温泉や有馬型温泉に関連しているものがあり、西日本を中心に日本全国に点在しています。

確認テスト

Q. 現海水からなる温泉を何温泉というか?

不正解

不正解

不正解

正解

【温泉の科学】温泉ってどうやってできるの?温泉の成因について まとめ

温泉は、熱、水、成分という要素から成り立っており、その組み合わせによって多様な個性を持ちます。火山性温泉は、マグマ熱を源としているため高温であり、酸性泉や硫化水素泉などの特徴的な泉質を持っています。一方、非火山性温泉には海岸温泉、深層地下水型温泉、化石海水型温泉、グリーンタフ型温泉の4種類があります。日本全国に古代のマグマ活動の名残があり、火山性温泉として現れるほか、様々なタイプの温泉が存在しています。