日本三名泉はどこ?いろいろな日本三大温泉解説|温泉の基礎知識

【温泉の基礎知識】第4回のテーマは「日本三大温泉」です。前回の記事では温泉マナーについて解説しました。今回は日本に数多くある日本三大温泉についてまとめました!ぜひお気に入りの温泉地を見つけてみてください。

地域や歴史で選ばれた日本三大温泉

【日本三大温泉①】日本三名泉

「日本三名泉」とは、兵庫県の有馬温泉、群馬県の草津温泉、岐阜県の下呂温泉の3つの温泉を指します。これらは、室町時代の京都五山相国寺の詩僧・万里集九が既に三名泉として書き残し、江戸時代の儒学者・林羅山がこれを参考に自らの詩文に残したことに由来します。

草津温泉

草津温泉は群馬県吾妻郡草津町に位置しています。毎分32,300リットル以上の自然湧出量を誇り、1日にドラム缶約23万本分もの温泉が湧き出している日本一の温泉地として知られています。また、草津温泉の泉質は強い酸性泉で、pH値は2.1ほどになります。これは日本有数の酸性度であり、雑菌などの殺菌作用が非常に強いといえます。

有馬温泉

有馬温泉は兵庫県神戸市北区に位置しています。温泉街は、六甲山地北側の紅葉谷の麓にあり、周囲を山々に囲まれているため、都会の喧騒から離れた静かな空間は「関西の奥座敷」と呼ばれ、多くの人々に愛されています。

また、有馬温泉は環境省が規定する療養泉の9成分のうち7成分を含む混合温泉で、「金泉」と「銀泉」という2種類の湯があります。「金泉」は茶褐色で「銀泉」は無色透明です。どちらの湯も保湿効果が高く、サラサラとした湯ざわりが特徴です。

下呂温泉

下呂温泉は岐阜県下呂市に位置している自然豊かな温泉地です。透明でやさしい湯の香りが漂い、肌がなめらかになると評判です。入浴することで、身体が温まり血行が良くなり、疲労回復や健康増進に効果があります。そのため「健康の湯」として多くの人に親しまれています。さらに、アルカリ性特有の石鹸効果により、なめらかな肌触りと美肌効果が期待できるため、「美人の湯」としても知られています。この湯は、運動後にも最適であることが特徴です。

【日本三大温泉②】日本三古泉

日本三古泉とは、万葉集、日本書紀、古事記など歴史上の文献に多く登場する古い温泉のことで、一般的には、日本書紀や風土記に基づく、愛媛県の道後温泉、兵庫県の有馬温泉、和歌山県の白浜温泉が挙げられることが多く、「日本三古湯」とも呼ばれています。また、延喜式神名帳に基づく別の説では、道後温泉、有馬温泉、福島県のいわき湯本温泉が挙げられますが、広く知られるのは前者の3つです。

道後温泉(日本書紀や風土記に基づく日本三古泉のひとつ)

道後温泉は愛媛県松山市に位置しており、聖徳太子や天皇、文学者など多くの著名人が訪れたとされる由緒ある温泉地です。道後温泉本館は国の重要文化財に指定され、日本で唯一の皇室専用浴場があることでも知られています。また、スタジオジブリの「千と千尋の神隠し」のモデルとされており、多くの観光客が訪れる人気スポットです。

白浜温泉(日本書紀や風土記に基づく日本三古泉のひとつ)

南紀白浜温泉は和歌山県西牟婁郡に位置しており、湯崎、大浦、古賀浦、綱不知、白浜、東白浜、新白浜の7つの温泉郷で構成されています。歴史は古く、孝徳天皇の子である有間皇子が657年に訪れたことがきっかけとなり、その後、天皇の行幸にもつながりました。斉明天皇、持統天皇、文武天皇も訪れており、これらは日本書紀に記録されています。また、白浜温泉には紀州徳川家15代当主の徳川頼倫が訪れた際に「帰るのを忘れさせるほど」と称した「忘帰洞」という洞窟風呂があります。

いわき湯本温泉(延喜式神名帳に基づく日本三古泉の一つ)

いわき湯本温泉は福島県いわき市に位置しています。1600年以上の歴史を誇り、湯量も毎分5トンと非常に豊富です。泉質は硫黄泉で「美人の湯」としても知られています。海に近い立地のため、新鮮な海の幸を楽しむこともでき、一年中温暖な気候に恵まれています。

【日本三大温泉③】日本三大秘湯

「秘湯」とは、朝日旅行会(現朝日旅行)の創業者である岩木一二三氏が1975年頃に作り出した造語で、交通の便が悪く、人の往来が少ない山奥や岬の突端などに存在する、穴場的な温泉地を指します。日本には多くの秘湯がありますが、なかでも北海道のニセコ薬師温泉、青森県の谷地温泉、徳島県の祖谷温泉は「日本三大秘湯」として知られています。

ニセコ薬師温泉(2014年5月に閉館)

ニセコ薬師温泉は北海道蘭越町日出の森の中に位置していた明治24年(1891年)開業の秘湯宿です。残念ながら、老朽化などの影響で2014年5月に閉館してしまいました。

谷地温泉

谷地温泉は青森県の八甲田山登山口に位置する400年の歴史を誇る秘湯です。温泉街はなく、一軒宿の素朴な佇まいに歴史ある秘湯宿の雰囲気が漂います。温泉には42℃の白濁した硫黄泉「上の湯」と38℃の単純硫化水素泉「霊泉:下の湯」の2種類の源泉があり、足下から直接自噴する湯は、腰痛やアトピーに効果的です。柔らかなお湯に浸かれば、日頃の疲れも癒せ、贅沢な時間を過ごせます。

祖谷温泉

祖谷温泉は徳島県三好市に位置する「祖谷渓の一軒宿」で、日本最大級の傾斜42度を誇るケーブルカーで谷底に170m下りた所に露天風呂があります。この湯船からは、祖谷渓谷の大自然を満喫することができ、四季折々の日本の自然を堪能できます。また、泉質はアルカリ性単純硫黄温泉で、古い角質を柔らかくし、優しく除去する効果があるとされ、「美肌の湯」と言われています。

確認テスト

Q. 日本書紀や風土記に基づく「日本三古泉」は次のうちどれ?

不正解

ニセコ薬師温泉・谷地温泉・祖谷温泉は日本三大秘湯です。

不正解

道後温泉・有馬温泉・いわき湯本温泉は延喜式神名帳に基づく日本三古泉です。

不正解

有馬温泉・草津温泉、下呂温泉は日本三名泉です。

正解

泉質や源泉数で選ばれた日本三大温泉

【日本三大温泉④】日本三大薬湯

日本には数多くの温泉があり、その泉質も細分化するとキリがなく多種多様です。なかでも成分が濃く薬湯のようなパワーがあるとされる温泉が「日本三大薬湯」です。一般的に日本三大薬湯といわれる温泉は、群馬県の草津温泉、兵庫県の有馬温泉、新潟県の松之山温泉とされています。

松之山温泉

松之山温泉は新潟県十日町に位置する温泉地です。泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉で、塩分濃度は通常の15倍を誇る日本屈指の温泉です。約1,200万年前の海水を含む世界的にも珍しいジオプレッシャー型温泉で、保温性に優れ、美肌や傷の治癒効果や慢性皮膚病や関節痛などの症状緩和にも効果があるとされています。開湯は約700年前で、越後国を統治していた上杉謙信の隠し湯の一つだったという説もあります。冬には積雪が4mを超えることもある国内有数の豪雪地帯となります。

【日本三大温泉⑤】日本三大美人の湯

「日本三大美人の湯」とは、群馬県の川中温泉、和歌山県の龍神温泉、島根県の湯の川温泉の3つをいいます。日本各地に「美人の湯」と名のつく温泉はありますが、大正9年(1920年)に当時の国有鉄道組織から発行された「温泉案内」がきっかけで広まった括りではないかと言われています。

美人の湯とは、主に肌をキレイする乳化作用が期待できる「三大美人泉質」と呼ばれる泉質の温泉をいいます。「三大美人泉質」はクレンジング効果をもつ「炭酸水素塩泉」、肌の蘇生効果が期待できる「硫酸塩泉」、そしてシミの予防効果がある「硫黄泉」の3つです。

川中温泉

川中温泉は群馬県の吾妻渓谷温泉郷に位置する秘湯宿です。源泉名を「美人の湯」と呼ばれており、無色透明の炭酸水素塩泉は保湿効果や肌の蘇生効果が期待できます。加温してもぬるめの湯であるため、長い時間お湯に漬かっていても湯あたりしにくいと言われています。また、川中温泉は鎌倉時代には源頼朝の家臣が療養のために訪れた記録が残る歴史ある温泉でもあります。川中温泉の一軒宿「かど半旅館」は山あいにある全室12室の人気宿です。

龍神温泉

龍神温泉は和歌山県田辺市龍神村の高野龍神国定公園内に位置する温泉地です。1200年以上もの歴史を持ち、修験道の開祖・役の行者小角(えんのぎょうじゃおづの)が発見し、弘法大師が夢で難陀龍王(なんだりゅうおう)からお告げを受けて湯を開いたとされています。和歌山の山深い場所に位置する龍神温泉は、貴重な文化遺産として知られ、多くの人々に愛されています。

湯の川温泉

湯の川温泉は島根県出雲市に位置する温泉地です。泉質は弱アルカリ性の炭酸水素塩泉で美容や健康に良い効果があるとされます。また、日本神話に登場しており、因幡の国(現在の鳥取県)のヤカミヒメが、恋する人を追う旅の途中で立ち寄ったのが湯の川温泉とされています。疲れを癒したヤカミヒメはいっそう輝く美人神になったといわれています。立地が良く、出雲空港から車でわずか10分の距離に位置しているため、搭乗前後に気軽に訪れることができます。

【日本三大温泉⑥】日本三大美肌の湯

「日本三大美肌の湯」として知られるのは、佐賀県の嬉野温泉、島根県の斐乃上温泉、栃木県の喜連川温泉です。中央温泉研究所と温泉評論家の藤田聡氏によって選ばれたとされており、これらの温泉は肌に非常に良い効能があるといわれます。

嬉野温泉

嬉野温泉は佐賀県嬉野市嬉野町に位置する温泉地です。武雄温泉とともに県を代表する温泉として知られています。嬉野温泉の歴史は古く、肥前国風土記にも記載されており、「東の辺に湯の泉ありて能く人の病を癒す」と記されています。地名の由来も興味深く、神功皇后が戦いの帰りに立ち寄り、白鶴が元気に飛びたつ川の中に湯が湧いているのを発見し、その湯が負傷した兵士の傷を癒したのを喜んで、「あな、うれしの」いったことからこの地名が付けられたとされます。

江戸時代には長崎街道の宿場町として栄えた嬉野は、伝統ある旅館や風情ある温泉街として知られています。嬉野温泉の源泉温度は85~90度で、泉質はナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉であり、リューマチや神経痛、皮膚病、胃腸病に効果があるとされています。

斐乃上温泉

斐乃上温泉は島根県仁多郡奥出雲町に位置し、日帰り温泉でも四季折々の自然を感じることができる温泉地です。泉質は強いアルカリ性で、肌表面の不純物や角質をまるでせっけんのように取り除き、肌を滑らかに整えるクレンジング効果が期待されます。また、斐乃上温泉以外にも奥出雲町には美肌効果が高い3つの温泉があり、「奥出雲美肌温泉郷」と呼ばれています。町内には、仁多米、奥出雲そば、奥出雲和牛、舞茸、椎茸などの特産品があり、栄養満点の旅を楽しむことができます。

喜連川温泉

喜連川温泉は栃木県さくら市に位置する温泉地です。泉質は弱アルカリ性で、硫黄・塩分・鉄分を多く含み、国内でもトップクラスの良質な温泉地として知られています。この泉質は、美肌効果や疲労回復に効果があるとされ、女性を中心に人気があります。喜連川温泉には複数の宿泊施設や観光スポットがあり、年中多くの人々が訪れています。

確認テスト

Q. 日本三大美人の湯は「川中温泉」「龍神温泉」と、もう1ヶ所は次のうちどれ?

正解

不正解

不正解

不正解

【温泉の基礎知識】いろいろな日本三大温泉解説 まとめ

日本には古湯や秘湯、薬湯、美肌の湯など、多種多様なカテゴリーの温泉があります。それぞれに日本三大温泉が挙げられており、泉質や効能、周辺の雰囲気などが異なります。古くは万葉の時代や日本書紀にも登場する温泉や、江戸時代から注目された温泉などもあります。日本三大温泉の中で、好きな温泉を見つけて出かけてみるのもおすすめです。