【温泉の科学】第3回のテーマは「温泉の泉質を解説」です。前回の記事では温泉の性質と温泉分析表の読み方について解説しました。今回は温泉の泉質を解説します!
温泉の泉質分類について
泉質とは
温泉の泉質については「温泉の基礎知識 第一回 温泉の定義について」でも軽く説明しましたが、温泉には、化学成分や温度、液性、色、匂い、味、肌触りなど、多岐にわたる特徴があります。泉質は、温泉に含まれる化学成分の種類と量に基づいて10種類に分類されます。温泉が療養泉の基準を満たさない場合は、泉質名は存在せず、「温泉法上の温泉」として記載されます。昔は「旧泉質名」が使われていましたが、昭和53年から環境省によって主な化学成分を記した「新泉質名」が使われるように改訂されました。
泉質の分類に関する歴史
泉質に関する分類方法や表示方法は、時代とともに変化してきました。古くは17種類に分類されていましたが、1976年には11種類、そして1979年には9種類に分類方法が見直されました。その後、「掲示用泉質名」が登場し、1982年には11種類に増えました。さらに、2014年には「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」により、わかりにくかった⑦含アルミニウム泉と⑧含銅-鉄泉が消え、大部分が⑦含鉄泉に吸収され、これまで塩化物泉に括られていた⑤含よう素泉が独立して10種類に分類されるようになりました。泉質分類には、さまざまな変遷がありましたが、現在は10種類に分類されています。
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温泉の泉質をすべて解説
【温泉の泉質①】単純温泉
定義
単純温泉は湧出時の泉温が25℃以上であり、温泉水1kg中の溶存物質量が1,000mg未満(ガス性成分を除く)である温泉をいいます。なかでもpHが8.5以上のものはアルカリ性単純温泉といいます。
特徴
アルカリ性単純温泉は、肌触りが柔らかく、刺激が少ないのが特徴です。入浴すると肌が滑らかになり、すべすべした感触が得られます。これは肌に優しく、癖がないため、多くの人にとって理想的な温泉と言えます。
【温泉の泉質②】塩化物泉
定義
塩化物泉は温泉水1kgあたり1,000mg以上の溶存物質(ガス性のものを除く)が含まれ、陰イオンの主成分が塩化物イオンの温泉をいいます。
特徴
塩分が主成分であるため、飲用すると塩辛く感じる場合がありますが、塩分濃度が高い場合やマグネシウムが多い場合は苦く感じることもあります。日本で比較的多い泉質です。
【温泉の泉質③】炭酸水素塩泉
定義
炭酸水素塩泉は温泉水1kg中の溶存物質量が1,000mg以上で、主な陰イオン成分が炭酸水素イオンの温泉をいいます。
特徴
カルシウムー炭酸水素塩泉からは石灰質の温泉沈殿物や析出物が生成されます。
【温泉の泉質④】硫酸塩泉
定義
温泉水中にガス性の物質を除いた溶存物質量が1kgあたり1,000mg以上含まれ、主な陰イオンが硫酸イオンの温泉をいいます。
特徴
硫酸塩泉には、ナトリウム-硫酸塩泉、カルシウム-硫酸塩泉、マグネシウム-硫酸塩泉など、陽イオンの主成分によって分類されます。
【温泉の泉質⑤】二酸化炭素泉
定義
二酸化炭素泉とは、温泉水1kgあたり1,000mg以上の遊離炭酸(二酸化炭素)が含まれる温泉をいいます。
特徴
入浴することで全身に炭酸の泡が付着し、爽快感を感じられるという特徴があります。この泉質は、日本では比較的少ないものの、飲用すると炭酸のシュワシュワ感が楽しめます。
【温泉の泉質⑥】含鉄泉
定義
含鉄泉は温泉水1kgあたり20mg以上の総鉄イオンが含まれている温泉をいます。陰イオンによって炭酸水素塩型と硫酸塩型に分類され、鉄イオンは鉄Ⅱまたは鉄Ⅲの形で存在します。
特徴
地下から湧き出て空気に触れることで、鉄の酸化が進み温泉の色が赤褐色に変わることがあります。
【温泉の泉質⑦】酸性泉
定義
酸性泉は温泉水1kg中に水素イオンが 1mg以上含まれている温泉をいいます。
特徴
口にすると酸味があり、殺菌効果がある泉質です。日本では各地で見ることができますが、ヨーロッパ諸国ではほとんど見られません。
【温泉の泉質⑧】含よう素泉
定義
含よう素泉は温泉水1kg中によう化物イオンが10mg以上含有する温泉をいいます。
特徴
非火山性の温泉に多くみられ、湧出後に空気に触れると黄色く変色します。
【温泉の泉質⑨】硫黄泉
定義
硫黄泉は温泉水1kg中に総硫黄が2mg以上含まれている温泉をいいます。
特徴
日本で比較的多く見られる泉質の一つで、硫黄型と硫化水素型に分類されます。硫化水素型の泉質は、特有のタマゴの腐敗臭に似た臭いがありますが、これは硫化水素が原因です。
【温泉の泉質⑩】放射能泉
定義
放射能泉は温泉水1kg中にラドンが30×10-10キュリー以上(8.25マッへ単位以上)含まれている温泉をいいます。人々は放射能に対して不安を感じることがありますが、ラドンの含有量はレントゲンなどの放射線量よりもはるかに少なく、実際にごく微量の放射能は、人体に好影響を与えることが分かっています。放射能泉は、健康に良いとされる効能があるため、多くの人々に利用されています。
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【温泉の科学】温泉の泉質を解説!塩化物泉や硫黄泉など まとめ
温泉には、多岐にわたる特徴があり、化学成分や温度、液性、色、匂い、味、肌触りが含まれます。泉質は、温泉に含まれる化学成分の種類と量に基づいて10種類に分類され、療養泉の基準を満たさない場合は、「温泉法上の温泉」として記載されます。泉質分類は歴史的に変遷しており、現在は10種類に分類されています。2014年には鉱泉分析法指針の改訂により、泉質分類に含まれる特定の種類が消え、他の種類に吸収されたり、新たに独立したりするなど変更がありました。